深刻な悩みに心を占領され「うわの空」に

先日、あるセミナーに参加していた時のことです。

ランチの時間にお弁当をいただくことになり、

思い思いに座って、食事を始めようとしていたら、

一人の受講生の方が、少し遅れてその場に入ってこられました。

椅子に座るとすぐにその女性は話し始めたため、

私を含めて周囲にいた数人の人が、それを聴く形になりました。

その話は、あまり楽しいものではありませんでした。

ご自分がどのくらい辛い気持ちを抱えて過ごしてきたか、

ご家族の方が、それに対してどのように振る舞ったのか、

辛い時、どんなことを考えてきたか、今はどれほど苦しいか、

苦しい、辛い、悲しい、寂しい…という言葉が、次から次へと口から出てきて、

止められないというような感じになっていたのです。

そこにいた人はみな、一人の例外もなく、食事を始めることが出来なくなり、

相槌をうちながら、そのお話を聴いていましたが、

いつまで経っても終わる気配がありません。

前に置かれ、どんどん冷めていくお弁当を前に、

その方のお話は続いていったのですが、

食べようという気持ちになれない、食欲がない…というよりは、

話に没頭し、その世界に入り込み、食べるのを忘れている…といった印象です。

その場の雰囲気や、人々の様子などに対してうわの空で、

ご自分がしていることに対しても無意識でやっているという感じでした。

これは、とても良くないことです。

良くないというのは、非常識であるとか、

やってはいけない非礼…という意味ではありません。

それほど深い心の闇が、その人をうわの空に陥らせているという

危機的な状態であるということです。

通常、食べたり、眠ったりすることは自然であり、心地よいことですので、

人間もそれ以外の生きものも、お腹が空いて食べ、疲れて眠ることを、

無意識に猶予したり、忘れたりすることはありません。

それが出来ないほどの深刻さということです。

何かちょっと気になることがあって、

つい食事が後回しになってしまった…ということならば、

もちろん問題はありません。

けれども、ご自分の行為に対して無自覚、無意識状態となり、

周囲の状況に気を配ることが難しいのであれば、

癒しのケアが必要なレベルです。

今、ここにいることが出来なくなるほど、

頭の中も、心の中も、お悩みで一杯ということに、

気付いて、手を打つことが求められます。

私が使う癒しのツールの一つ、多次元セラピーでは、

「悩みがある時、その悩みが、既にその人をトランスに入れている」

という考え方をします。

表面的には、食事をしたりお茶を飲んだり、

家事をしたり、育児や介護をしたりしていても、

心ここにあらず、お悩みのほうに意識が全部持っていかれて、

常にぐるぐるとその周辺を回っているのです。

私にも覚えがあるのですが、若い頃、友人と一緒に映画館の椅子に座り、

視線は、スクリーンに向けられているというのに、

内容が頭に全く入ってこなかったことがありました。

スクリーンを見ていても、実際には映像は目に入らず、

悩んでいたことが、絶え間なく頭の中で渦を巻いていました。

「今、ここ」にいることには、たくさんのメリットがあります。

体験そのものを、じっくりと味わい、落とし込むことが出来るのはもちろん、

過去や未来に意識がさまよっていかないため、

過去への後悔、未来への不安、頭の中の時間割など、

不要な感情や想念、無用な制限などから自由になれます。

すると、ほど良い集中が保たれて、明晰さや直感力が高まり、

自己治癒力や免疫力が働くのにも良いコンディションとなります。

その逆の状態を考えてみれば、「今、ここ」にいられなくなっていることが、

どれほど心の平和と身体的な安らぎを阻害してしまうか、

ご想像いただけることでしょう。

「今、ここ」の空気の流れや温度、匂い、音、快適さや不快さ、

今、ここで起こっている出来事や、一緒にいる人々とのつながりが

自然に感じられているならば良いのですが、

もしもそうでなかったら、それを自覚されて、

休養を取ってみると良いかもしれません。

はっきりと言葉に出来るようなお悩みがあるならば、

すでに相当、深刻な状態であると理解されて、

信頼できる誰かに相談するなり、カウンセリングかセラピーを手配するなり、

行動することをお勧め致します。

最初にお伝えした、ランチも食べずに話し続けた方の場合、

どうやら数年間に渡って、ご家族関係がもつれ、ひどい言動を受け続け、

それによって、身体的に問題が起こってしまったということです。

私は、セラピスト・ヒーラーとしてではなく、

一人の受講生としてその場にいたので、

その時は、頼まれてもいないのに介入するようなことはしませんでしたが、

今も、その方の重くて深刻な問題が気にかかっています。

今、これを読んで下さっている方のなかに、

もしも思い当たることがあるという方がいらっしゃいましたら、

どうぞお気軽にご相談いただければと思います。

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