クライアントを責めるセラピスト

ヒプノセラピーをされたことのある方から、

セッションの際、ヒプノセラピストから非難された嫌な体験について、

お聴きすることがあります。

先日も、クライアントの方の過去の体験として、

責められ、文句をつけられ、「こんなことだから良くならない」と

捨て台詞のようなことを言われたというお話を聴いて、

胸が痛み、腹立たしくも感じました。

セッションに行かれた方は、本当に辛い思いを抱えて、

もはやどうしようもなく、やっとの思いで行動されたはずです。

お悩みやストレス、疲労などで心身ともに大変な状況であるのに、

頼りにしていたセラピストから、このような心無い言葉を投げかけられたら、

どれほど辛く、不愉快であっただろうかと思います。

この言葉を聞いただけで、かえって悪化してしまうでしょう。

セラピストがクライアントを責める…

こんなことはあってはいけないことに違いありませんが、

現実には、少なからず起こっていることのようです。

セラピストは、セラピーをするからには、

当然のことながら、クライアントの方に良くなっていただきたいと願い、

真剣に向かい合っているはずです。

プロとしてのヒーリングマインドや共感的姿勢を、

それなりに持っているはずのセラピストが、

なぜこのような言葉を投げかけてしまうのでしょうか?

もうだいぶ前のことになりますが、

オランダのハンス・テンダム博士による

多次元セラピーのコースを受講していた時、

ハンス先生が、この話題について触れられたことを思い出します。

多次元セラピーは、トランスパーソナル退行療法であり、

精神、感情、身体の深いレベルでトランスパーソナルにワークしていくため、

この手法を使ってはいけない(適性に欠ける)セラピストについての

ガイドラインを持っています。

そうでないと、使っているセラピスト自身に問題が起こってしまったり、

あるいはそのセラピストから多次元セラピーセッションを受けた

クライアントの方に問題が起こってしまうおそれがあるためです。

ガイドラインの中で、

「クライアントを責め、非難するセラピスト」は

適性に欠ける問題ある態度の一つとして挙げられていました。

セラピストは、セッションの際、

クライアントのためを思って、出来る限りのことをしていくと思いますが、

もしもそれが上手くいかなかったり、成果が見られなかったりする時、

セラピストの中に、ある感情が生まれます。

それは、

○成果を上げなくてはならない

○上手くいかないはずがない

○こんなはずではないのに…という落胆

○上手くいかなかったのは、自分の落ち度ではない…という

苛立ちと開き直りです。

こうあるべき、こうなるはずという強い思い込みと、

何がなんでもこのセッションで結果を出したいという期待が

背後に見え隠れしています。

では、結果を出すとは、どのようなことを意味するのでしょうか?

セラピー直後に、「ああ、とても癒されました…」

「すっきりして気分がいいです!」「有難う」と

クライアントから言ってもらったら、

結果が出たということになり、セラピストは満足するのでしょうか?

それとも、セラピストが自ら想定していたとおりに

セラピープロセスが進んでいったならば、

その結果に納得できるというのでしょうか?

セラピーの効果は、直後に実感されることもありますが、

数日から数週間、数か月経過するうちに、変容や統合が進み、

じわじわと現れてくることがありますし、

クライアントの方のほうが、

必ずしもそれを実感、体感されるわけではない場合もあります。

なぜならば、一つのテーマにワークして、解放が起こると、

その下に潜んでいた別の問題が浮上してくることがあるためです。

スポーツの試合のように、ゲームオーバーで勝敗が決まるのとは異なり、

セッションは、終了と同時にはっきりと結果が見えて、

ただちに勝利の喜びを味わえるというものではないのです。

さらに問題なのは、

クライアントの方に、癒しや解放が起こったとして、

なぜそうなったのか、何によってそれが起こったのか…

ということに対する勘違いです。

セッションが終わり、仮にセラピーが上手くいったとして、

そうなった功労者は自分(セラピスト)であるとでも思わない限り、

そこまで結果に執着することはないでしょう。

セラピーの結果が、クライアントの望むとおりのものであったのか否か、

セラピストの望むとおりのものであったのか否か、

そうあって欲しいのか、

それをどのように考えているかによって、

クライアントの方にかける言葉は変わってくるはずです。

セラピーやヒーリングのセッションは、

セラピストやヒーラーがその力を発揮することで、

クライアントを (一方的に) 「癒してあげる」ものではありません。

クライアントの方が心から癒しを望み、癒しに取りくみ、

癒しへのご本人の許可とタイミングが整ったとき、

その方の自己治癒力が最大レベルで動きはじめ、癒しにつながります。

それは、奇跡のような情景だと、私はいつも感じます。

セラピストの役割は、クライアントがご自分のリソースによって

生み出しつつある、いわば自己ヒーリングのプロセスを、

サポートし、促すお手伝いすることにほかなりません。

こうしたい、こうあるべきと結果に執着する視点からは、

クライアントの内側で起こっている癒しのプロセスや稀有なリソースが、

視野に入ってくることは無くなるでしょう。

セラピストがエゴにとらわれ、

クライアントのためではなく、自分のためのセッションをする時、

クライアントとクライアントの自己治癒力・リソースを認めることはなくなり、

敬意の代わりに咎めたり非難したりする言葉が生まれます。

ヒプノセラピーをはじめ、さまざまなセラピーそのものに対する見方が、

暴言を受けた不快な記憶と結び付いて、

嫌悪感や恐怖など否定的なものになってしまうとしたら、

とても残念なことです。

本来は優れた癒しのツールであっても、それを用いるセラピスト次第で、

時に有害となり、深刻な問題を引き起こしてしまうということです。

クライアントの方には、なんの落ち度もありません。

今までに不快な体験をされたことがある場合には、

このことをぜひ知っておいていただければと願っています。